WHY we need a Circular Economy? なぜサーキュラーエコノミーが
必要なのか?

これまでの経済成長と線形経済

我々人類は、18世紀半ばから数回の産業革命を通じて大きく経済を発展させ、社会経済システムを変化させることで豊かさを手に入れてきました。電気・自動車・コンピュータなどハード面だけでなく、人権の確立・識字率の向上・乳児死亡率の低下などソフト面も今日では当たり前のことのようになっています。

これまでの経済成⻑と線形経済グラフ

第二次世界大戦後、経済成長はグレートアクセラレーションと呼ばれる時期を迎えて更に大幅に伸び、人口は爆発的に増加しました。人口は2050年に現在の約1.2倍である97億人に到達するとも言われています。

グレートアクセラレーションの社会経済動向(1750年〜2010年)

これまでの流れの中で当たり前であった経済モデルは資源やエネルギーを直線的に採取し・使い・廃棄することから線形経済と言われていますが、このモデルは経済成長や豊かさの享受と引き換えに、副作用として大きな負荷を地球環境に与えてしまうことが分かってきており、1970年代以降この負荷が地球環境の再生能力を上回る状態が深刻さを増し続けてきているとされています。

顕在化する環境問題

人類の経済活動が地球環境に与える影響を測定する指標の一つとして挙げられるプラネタリーバウンダリー(地球の環境容量)は、地球環境が本来持つ再生能力を維持するために不可欠な9つの領域とそれらの限界点を定義していますが、既に9つの内4つが安全圏外にあり、それらは互いに影響しています。その中でも持続可能性に関連して大きく顕在化している気候変動が現在世界の取り組む優先的な社会課題となっており、生物多様性や化学肥料の使用も含めた土地利用などが続いて注目を集めていくと想定されます。

また環境問題は公共財の問題のため、政府も関わり官民が連携して取り組む必要があるとされています。

プラネタリーバウンダリー(地球の環境容量)

プラネタリーバウンダリー(地球の環境容量)

天然資源不足の不安

環境問題の深刻化と併せて天然資源の不足も不安視されています。OECDの調査によれば、2060年までに世界全体での一人あたり平均所得が現在のOECD諸国の水準に近づき、世界全体の資源利用量は現在の2倍(167ギガトン)に増加すると推計されており、この需要に供給は追いつかない、またはこれまで以上に環境に負荷をかけた開発が必要になってしまうと考えられています。このような物理的な不足に加え、特定地域のみが資源をコントロールすることなどによる政情不安定化といった地政学的な不足も課題として挙げられています。

経済学的な視点では、資源不足は自由市場の価格調整メカニズムや二次市場創出のインセンティブにより解決可能と考えることができますが、現実としてその動きはあまりに遅く、政府の介入によって効果的に資源を保護し利用を規制する必要があると考えられています。

デカップリングと新しい経済モデルの必要性

現在の線形経済では、増加する人口とその生活水準の向上を支える経済成長は副作用としての環境負荷の加速と資源不足の顕在化とセットになっており持続可能ではありません。そのため、経済成長と環境負荷増加の加速、経済成長と資源不足の深刻化をできる限り切り離して実現する必要があると考えられています。この切り離すことをデカップリングと呼びます。

デカップリングのグラフ

デカップリングを実現し経済を成長させるためには、環境負荷が低く地球環境の再生能力に収まりながらもエネルギーと資源を使って成長する経済モデルが必要です。それを背景に、資源やエネルギーの利用を様々な段階において意図的に再設計することを通じて再生し循環させ、自然のシステムが再生可能なバランスを取りながら成長を求めていくサーキュラーエコノミー(循環経済)という経済モデルが、新たなモデルとして注目を集めています。

企業による環境問題への関心の高まり

90年代から地球温暖化を防ぐ枠組みを議論する場としてCOPが毎年開催され京都議定書が採択されるなど、環境問題や持続可能性への関心は徐々に高まっていましたが、企業の活動にとって大きな契機となったのは2008年のリーマンショックです。欧州のグローバル企業を中心に長期目線で経営を行うことの重要性を感じ、環境や地域社会と共存しながら利益を拡大し成長していく経営の考え方や、ESG(環境・社会・ガバナンス)、SDGs(持続的な開発目標)などの概念が広がりました。またこの点について消費者からの要請も高まりました。気候変動などの環境問題や天然資源不足のリスクを考慮すると省エネ・省資源と資源循環を合わせて進めていくことは長期的なコスト低減につながり、消費者からの要請に応えることにもなることから、企業による環境問題への取り組みはますます進められていく流れになっています。

Why What How